ストーリー:第一幕(4)
- ubiquita6
- 2019年9月7日
- 読了時間: 6分
更新日:2019年10月25日

こんにちは。
今回もミュージカル「サニー・アフタヌーン」のストーリーを追って行きます。
・本当に舞台を見た人の正しい情報はテキサスペーパー
・音楽は30秒サンプルでループしちゃいます。全曲聴きたいときはこちら
・最初の話はこちら
レイとラサのロマンチックなデュエットが終わると、ビジネスサイドへ話が転換します。
経営者のKassnerがやってきてYou Really Got Meが世界中でヒットしていると告げます。
「君たちは想像以上の金持ちになれるぞ!」
レイがすべきことはひとつ、次のヒットソングを書くことでした。
タイプライターに向かって曲を書くレイの側に立ったKassnerが、自身の過去を明かしていきます。

オーストリアで生まれ育った彼はナチス政権の被害者となり、家族はアウシュビッツに連れていかれ、単身ロンドンへ亡命したそうです。
その逆境の中で彼は「プレジデント・レコード」を起業するのです。

そんなにすごいKassnerさんですが、その人生を語るにあたり「そう、レイ、君と同じように…」とレイを自身と並べながら説明します。レイに寄せる期待の大きさが描かれています。
身の上話は、レイのタイプライターから生み出されたAll Day and All of the Nightの冒頭メロディによって中断されます。
この新曲は次のヒット曲になるに違いないとすぐに気が付き、Kassnerは大喜びです。「君を永遠にしてやる!」と息巻くのでした。
場面は変わり、レイはロンドンの街角でラサと話をしています。彼女と会うことができて嬉しそうなレイですが、その口から告げられたのは衝撃的なできごとでした。
彼女は気を失って病院へ運ばれ、妊娠していることが判明したというのです。そして学校を辞めさせられたと。彼女の両親は敬虔なカトリック教徒で、レイが結婚を拒めば一家の人生を台無しにしてしまうことは明らかでした。
「デイヴが新郎の付き添いをしてくれるわ」
「よりによってあいつに指輪を運ばせるって?本気なのか…」
レイは、ツアーが控えている今はできない、と言ってかわそうとします。
しかし彼がこの結婚を受けるべきであることには変わりません。
(劇中ではこのようにアレンジされていますが、実際のレイは一連のできごとが起こる前にラサの懐妊を知っており、結婚にも同意していました)

レイたちを待ち受けているのは有名人の宿命、スキャンダルのニュースフラッシュです。
せっかく手に入れた大きな成功が台無しだ、とマネージメント陣は頭を痛めます!
PR担当のSommervilleは「どうして俺に任せてくれなかったんだ?そこらのプレス中に知れてしまって、下手すればこれで台無しだ!」と嘆きます。彼はビートルズのコンサルタントを担当した折に、ジョンレノンの結婚を隠し通した経験がありました。

この件に関しては、デイヴも神経をすり減らしていました。彼はガールフレンドを妊娠させたせいで退学になった過去を抱えています。
「同じ原因でバンドが解散したら、母ちゃんに殺される!
なんでそいつをパンツの中にしまっておけなかったんだよ!!」
文句を言われたレイも黙ってはいません。
「お前とブライアン・ジョーンズみたいにか!(※由来はインターネットで調べよう)
よく言うぜ、お前なんか会ったやつ全員とやってるだろ!」
レイがおどけて『俺はデイヴ・ザ・レイヴさ!』とモノマネして見せると、とうとう怒った弟は兄に殴りかかり、ピートに懸命に止められます。
劇中においてデイヴィス兄弟が初めて喧嘩する姿を見せるシーンです。
そしてなんだかんだと迎えた結婚式の日。

12. Stop Your Sobbing
レイとラサの結婚式、そしてポップス界と女性ファンに与えた衝撃の様子がStop Your Sobbingを通して描かれます。式にはファンの女の子たちが駆けつけて「レイ!結婚なんてやめて〜!」と騒いでいます(かわい〜!)。
この幸せな結婚式のシーンは束の間、ツアーへの出発を告げられます。
出産間近のラサを置いて、レイは飛行機に乗らなくてはいけません。
次のシーンでは、バンドメンバー4人がそれぞれの思いを、手にした受話器へ語りかけます。予告編の1:29〜、1:48〜にあたる場面です。
子供が生まれそうなレイはアメリカに行くことを嫌がっています。
「アメリカなんか行って撃たれたくない」とごねるとマネージャーに「ロックミュージシャンなんてわざわざ撃つほどのものか」と言い返されます。(レイが後年スリを追いかけて脚を撃たれたことと、ジョン・レノンが射殺されたことの皮肉を含むセリフです)
「アメリカで成功しなきゃ一流とは言えない」とあくまで商業的なマネージメント陣に、レイは音楽的な高みを目指すべきだと反発します。
「人々が求めているのは、彼らの人生を表現する歌だ」と。
13. This Is Where I Belong
ここでレイが静かに歌う曲では、彼の父親としての自覚と、愛するイギリスを離れなくてはいけないという思いが表現されています。
次に描かれるのはミックの不満です。彼はレコーディングでなくツアーにばかり時間を取られる活動が、1965年の時流に合っていないと文句を言います。それからデイヴが女の子たちを取っていってしまうことも。
デイヴは曲を書きたい、そのためにインプットする時間が欲しいと言います。
ピートはバンド内で孤独感を感じており、辞めたいという気持ちをこぼします。
4人の会話は断続的に切り貼りされるように展開し、バンド内で高まっていく緊張感を感じ取ることができます。

そして始まるのが第一幕最後の場面、イギリスツアーのカーディフでのコンサートです。
ミックとデイヴが険悪な雰囲気のなか、レイは娘が生まれたというニュースの電話を受けます。しかしバンドは大きなプレッシャーとストレスに晒されて崩壊寸前です。
14. Where Have All the Good Times Gone / All Day and All of the Night
ここで演奏されるWhere Have All the Good Times Goneはすっかりめちゃめちゃになっているバンドの状況を現しています。曲の途中でミックとデイヴは喧嘩を始め、一旦演奏が乱れてしまうのですが、All Day and All of the Nightに切り替えることでなんとか食い止めます。
2人の勘気も一旦収まるかと思われましたが諍いは続き、デイヴがミックのドラムキットを乱暴に扱うと、怒ったミックはとうとうドラムペダルでデイヴに殴りかかってしまうのです。
我に返ったミックが後悔する間もなく、彼は警察に追いかけ回されます。逃げ回るミックの代わりにピートはベースを弾きながらドラムも演奏しようとしますが、当然コンサートが続けられるはずがありません。
レイは大声で叫びます。
「こんなメンバーとアメリカに行けるのは頭のおかしい奴だけだ!」
そして観客呆然のまま第一幕・完!
波乱の予感しかしないアメリカツアーがとうとう始まる、第二幕へ続きます。
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