ストーリー:第一幕(2)
- ubiquita6
- 2019年9月9日
- 読了時間: 5分
更新日:2019年9月14日

こんにちは。今回もミュージカル「サニー・アフタヌーン」のストーリーを追って行きます。
・本当に舞台を見た人の正しい情報はテキサスペーパー
・音楽は30秒サンプルでループしちゃいます。全曲聴きたいときはこちら
・ひとつ前の話はこちら
契約書へのサインを求めて、マズウェルヒルのデイヴィス家を訪れたマネージャーとレイたち。デイヴィス家では両親と4人のお姉さん達が勢揃いしていました。
自分の稼ぎではとても家なんて買えず、この家も借家なんだと話すお父さん。彼がDead End Streetを歌い始めると、デイヴィス家の苦しい生活が、切実かつユーモラスに描かれていきます。
06. Dead End Street
実際のマズウェルヒルの写真がこちらのサイトに載っています。
街の様子は1枚目、デイヴィス兄弟の生家は2枚目をどうぞ。
本物の写真を見ると綺麗で可愛いお家じゃん…って思うんですけど、当時はボロボロだったのかな。
なんとも世知辛いこの歌詞を歌っているのは両親で、そこに「Dead end!」とコーラスを入れるのは子供達です。最後にはトロンボーンも登場してニューオーリンズスタイルジャズの様相を成し、子供達は楽しく走り回ってまるでデイヴィス家の土曜夜のパーティのような演出となります!
ここで描かれているのは惨めさというよりも、そうしたものをはねのける「労働者階級の誇り(working-class pride)」のようです。
ここでもう一つ語られるのは、レイが音楽を始めたきっかけです。
一つはお父さんがミュージックホールのバンジョー奏者であったこと。
もう一つは、レネ(Rene)という名のお姉さんがレイに最初のギターをプレゼントしたことでした。
レネお姉さんとレイの誕生日の悲劇についてはこちらをどうぞ。
両親はデイヴに比べてレイの性格がセンシティヴであることに触れます。お母さんは、何がレイのtickな性格を形作っているか、その答えを知っているのはすでに亡くなってしまった姉のレネなのだろうと思っているようです。そして、そんなレイが音楽を通して求めているのは名声やお金ではないのだと。
「あなたはレイを理解していないけれど、必ずわかる日が来るわ」とKassner(Denmark Streetで髪も歌も気に食わないが契約してやる、って歌ってた人ですね)へ告げます。

「この契約にサインすることで、お子さんたちはあなた達が得なかったチャンスを掴むことができますよ」
契約内容を説明されたお父さんは「10%をマネージャーに支払うという内訳は普通なのか?」と訝しげです。実はこの契約書、マネージャー4人それぞれに10%という内容なのですが。
「この契約には何も裏はありませんよ。
最近デビューしたザ・フーというバンドなんて20%ずつ支払ってます」
早くサインしなければKassner達の気が変わるのではないかと、デイヴは気が気ではないようで父親をせっつきます。そしてレイがDead End Streetの一節を口ずさむと、それに応じるように両親は契約書へのサインに踏み切るのでした。
うわ、お父さん、お母さんーーーー!
両親が心配する気持ちはよくわかりますし、舞台でも実際にロック産業によって傷ついていくレイ達の様子が描かれていきます。しかし「自分たちと同じ暮らしを子供達に続けさせる…」ということに思いを馳せた結果、ご両親は契約に踏み切ったのかと思うと、この曲の使い方めちゃめちゃ上手いですね。レイがどの歌詞を歌ったのか気になるな。
最後にDead End Streetの賑やかな演奏がリプライズします。

無事に契約が済んだら、次はどう売り出すかを考える段階です。
衣装を探しにカーナビーストリートへ向かいましょう!
キンクスの4人が、緑色の乗馬ジャケットを纏って試着室から登場します。

「どう?」
「キンキーじゃないか!……おい、キンクスっていうバンド名、良くないか?」
名前を思いついたのはプロデューサーのPageでした。予告の0:40のところですね。
へんてこで女の子たちの好奇心をそそる名前は、「そんなに顔の良くない」4人組にはうってつけのギミックだというのです(史実では乗馬靴や鞭まで装着させてますが)。
「必要なのはそういうギミックじゃなくて、良い曲だろう」と不満顔のレイは「それならデイヴについての曲を書くんだな、女の子たちはデイヴが好きなんだから」と言い返されてしまいます。
そう言われてすぐ曲ができてたまるか、と言いながら、今回はどうも閃いてしまった様子のレイ。
それに気づいたデイヴが「降ってきちゃったか、兄貴〜!全く才能があるって大変だよな!」と茶化します。
07. Dedicated Follower of Fashion
レイがデイヴを描いたこの曲。
レイが「彼はファッションの信奉者…」と紹介する部分を歌い、「お楽しみを求めるこの身はいつでもバッチリキマッてるんだ!」などデイヴを表現する歌詞になると彼自身がボーカルを取っているという構成です。
はしゃいでとっても楽しそうですね!
赤いフェザーボアを纏ってご満悦のデイヴを横目に「ふーん……って、なんだよその格好!」とレイが突っ込みを入れる一幕もあるようです。
ここでマネージメントの口出しはレイの前歯に及びます。
すきっ歯の前歯を差し替えたほうがいいというのです。
「大きな成功のための、ほんの小さな犠牲だよ」
「冗談じゃない!見栄えは悪いかもしれないが、少なくとも本物のおれの歯だぜ」
出た、本作品最大の再現こだわりポイント…!俳優さんの前歯完コピは衝撃です。
説得に応じないレイに対してPageは続けます。
「自分を守ることがそんなに大切か?スターになることと、どっちを選ぶんだ?」
「いや、それはずるい訊き方じゃないか」
デイヴがそう指摘すると舞台は暗くなり、ついにデビューしたキンクスがインタビューを受ける場面へと移ります。
続く
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